中2の夏の課題の中に“染み抜きをやってみる”というのが目に入った。
「お~、いい課題だねぇ、ちゃんとやってみなよ。」と声をかけると
「別にこれやらなくてもいいんですぅ。」と返答が。
「ダメダメちゃんとやらなきゃ。
じゃ、先生が用意してあげるから。」
と次の日、布地と水と醤油を用意して私が手本を見せた。
「すごぉ~い!」と感動してくれた後、「自分でもやってみたいですぅ。」と。
しばらく席を離れてたら「出来たぁ!」との声が。
教育とは、こういうモノだと思うんだがな、としみじみ思うワケで。
実に、染み抜きには、強烈な想い出がある。
大学生の頃のこと、居酒屋で飲み会があった。
何人かの男女の集まりで飲んでいたのだけれど、そこに鹿児島出身の友人がとても可愛い女性を連れてきたのだ。
真っ白なブラウスを着ていたのは、鹿児島からの旅行で来ているとなれば、いわゆる余所行きの服に違いなかった。
ところがしばらく経って事件が起きた。
宴も盛り上がっていた時、醤油が一滴、彼女の真っ白なブラウスの袖に落ちたのだ。
「あ~~っ!」その瞬間、誰もが声を上げた。
みんなが「大変だっ!」という思いを共有したのは間違いない。
ところが、その後、驚くべきことが起きた。
彼女は、何気にハンカチを取り出すと、それを袖口にあてがい、コップから僅かな水を垂らすと、おしぼりでトントンと叩きだしたのだ。
すると、数分後には、すっかり醤油の跡はなくなっていた。
それは、まるで手品のようだった。
その一部始終を見ていた私たちは、ただただ「すごい、すごいっ!」って言う他なかった。
そして、私も下宿に帰ってから、いろいろ実験してみたものである。
そんな想い出。
P.S
飲み会の後、オトコ連中の意見が真っ二つに割れた。
“お嫁さんもらうなら、あんな人がいいね。”派と、
“あんなに躾がしっかりされている人は、オレはとてももらえそうもない”派と。
今となっては、染み抜きという行為は、シミを取り去る効果だけではなく、
教養をも表すものでもあるような気がするんだな。
女性だけでなく、男性も女性がそんなトラブルに遭った時に、さりげなく対処できたら 、ここぞという時にきっとお株が上がるかもよ。
洗濯に出せばいいじゃん、という世であれば、
“染み抜き”なるものは、単なる教養のバロメーターに過ぎないのかもしれませんね。
若者達よ、とりあえず醤油程度の染み抜き技術は身に付けておこう。