2023年6月14日水曜日

ほかならぬ人へ

ほかならぬ人へ

  白石 一文著

直木賞を受賞している。

「ほかならぬ人へ」
「かけがえのない人へ」

の2編で構成されている。
物語としては、2編は独立している。

タイトルからして、何か長い人生を越えて、大切な人への想いの情景を期待して読んだけれど、

私の期待は外れて、結婚に絡む若い(私から見たら)男女の恋愛事情でありました。

しかし、それぞれの章に出てくる男女の、その思考の自由さに驚いてしまうのは、私の高齢が故か。

何だか読んでいても、「まじか。」と思わされる点が多いこと多いこと。

だから小説だ、と言われればその通りだけれど、あまりにも凡人の世界からかけ離れていやしないか?

# と、切に信じたいのだが。

しかし、マジこういった関係の男女もいたりするんだろうな、世の中には。

ただ、この物語の内容はともかく、その形而上的な人とのつながりとは何だろう、ということはつくづく考えさせられた。

なにか言葉にはできない、論理的に説明できない、それでもつながってしまう人間を

「ほかならぬ人」であり「かけがえのない人」なのであろうか。

本物語は、いささかその辺りが漠然としている気がする。

もっと長編でいいから、一生を通して人間にとって、「ほかならぬ人」「かけがえのない人」を表現して欲しかった感が否めない。

けど、それは、高齢者の行きついた末の思考であれば、小説として生まれるのは難しいかもなぁ。

もしそんな本が生まれれば、それはある種の哲学書になり得ると思うのだが。



P.S

「かけがえのない人へ」を読みながら、島耕作を思い出してしまってすみません。