2007年2月2日金曜日

一流になるためには

「一流になるためには学校教育は効率が悪すぎるって祖父が言ってたけど、どう思う?」
と彼女が私に訊ねた。
「そうだね、たぶんそうだろうな」と私は言った。
「僕は16年学校に通ったけど、それがとくに何かの役に立ったとも思えないから。
 語学もできないし、楽器もできないし、株のことも知らないし、馬にも乗れないし」
「じゃあどうして学校をやめなかったの? やめようと思えばいつでもやめられたんでしょ?」
「まあ、そりゃね」と私は言って、そのことについて少し考えてみた。
たしかにやめようと思えばいつだってやめられたのだ。
「でもそのときはそんなこと思いつかなかったんだ。
僕の家は君のところと違ってとても平凡であたり前の家庭だったし、
自分が何かの面で一流になれるかもしれないなんて考えもしなかったしさ」
「それは間違ってるわよ」と娘は言った。
「人間は誰でも何かひとつくらいは一流になれる素質があるの。
 それをうまく引き出すことができないだけの話。
 引き出し方のわからない人間が寄ってたかってそれをつぶしてしまうから、
 多くの人々は一流になれないのよ。そしてそのまま擦り減ってしまうの」
(中略)
一流の人間というのは普通、自分は一流の人間になれるという強い確信のもとに一流になるものなのだ。
自分はたぶん一流にはなれないだろうと思いながら事のなりゆきで一流になってしまった人間なんてそんなにはいない。

      世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹より
 
 
気に入った部分にティッシュの切れ端を挟みながら読んでいったら
ティッシュだらけになっちゃって、途中で全部破棄。
 
あえて、記憶に残っている部分から上記部分を抽出。
ハルキファンには、こんな部分を抽出するなよ、って言われそうですが。
私には、、、、ですから、まぁ許してください。
 
P.S
久しぶりに若い小説を読んだ気がする。
結構時間がかかった。
ストーリー性を追いかけるのは、、、、エヘ。
 
しかし、そのシーンは、激しいところもあるのだけれど、
実にのどかで美しかったりするところもあり。
人生の最後は、こんなんでありたいな、、、とも思ったり、
こんな最後は、私には、無理だな、、、とも。
 
いいえ、今回は出演者は誰も死にません。
時々のシーンとそのストーリーの意外性とが楽しめる小説です。
小説を読みなれている方には、お奨めですが、
日頃、あまり本を読んでいない方には、ハードルが高いかも。
 
ノルウェイの森からは、かなり遠い距離の小説に私には思えましたが、
間違いなくこれが村上春樹ワールドでしょう。
 
好きだな、こういうの。
 
 
PM 10:23:26