2007年2月19日月曜日

通夜に弔辞を書く。

昨日亡くなった彼の奥さんから電話が来た。
弔辞を読んでくれないか、という。
涙もろい私は、ボロボロになるから、出来ないと断った。
が、彼への弔辞は、あなたが最もふさわしいからという。

確かに私と彼との関係は長い、そして、深い。
前の会社の入社面接の時にそのビルのエレベーターホールで知り合って、
一緒に働き、今の会社に転職もした。
 
今の事務所一緒にを立ち上げてからは、20年間、ほとんど毎日一緒であった。
仲がいいとか悪い、とかでなく、もっと何か他の絆で結ばれていたような気がする。
私にとって、いや彼にとっても、どの家族よりも長く顔を見続けていた相手であったはずだ。
 
そして、弔辞を受けた。
生れて初めての弔辞であった。
作り方も何も知らなかったけれど、精一杯書こうと思った。
 
文面はすらすら書けた。
思いのままに書くだけであったから。
 
墨と硯を引き出して、せっかくだから筆で書き始めた。
15年間習っていても、やはり私の字は下手である。
青墨がなかったので、普通の墨を薄めて書いた。
長い文章で。字は下手。墨も濃かったり薄かったり。行間もまちまち。
けれど、それで構わないと思った。
自分の持ちうる能力で精一杯やれば、それでいいと思った。
それが、彼への最後の誠意だと思った。
 
 
P.S
ほんとうに字は下手である。
が、それでも構わない。
そう思えたのは、15年の長さ故かもしれない。
 
けれど、弔辞は後でわかったのだ。
書くことよりもそれを読む方が、遥かに難しいってことを。
 
 
PM 11:58:00