2008年7月20日日曜日

一度も登らぬバカ、二度登るバカ。

とあるページで富士山の話題に触れている記事を見つけたので、
懐かしくなって、ちょっと書く。

タイトルの文言は、富士山のことである。

富士山は、実に美しいのだけれど、
登ってみると、とてもつまらない山である。

# もっとも登る目的によって異なりましょうが。

そもそも富士山登頂は、一般人にはツライ。
下界の眺めはいいのだけれど、高所により木々はない。

森林浴的な、のどかな雰囲気もなければ、坂道・階段上の岩場の石の連続で
とても過酷である。

生前、父に誘われ、富士山登頂を試みた。
父は、70歳頃のことである。

死ぬ前に一度富士山からご来光が観たい、ということで、
5合目から登頂のバスツアーに親子で参加した。

ご来光を拝むツアーで、8合目に山小屋が予約してるパック。
バス1台での団体なので、総勢30名ほどであった。

まず、結果を書くと、、、山頂に到達したのは、15名ほど。
したがって、団体の約半数しか山頂には到達できなかったのである。

私は、父の後見人として参加した。
団体の先頭には先達、最後方には、健脚そうな若者ツアーコンダクター。

午後3時頃、5合目から歩き始めたものの、
6合目を過ぎた辺りから、父が集団から遅れだし、

後ろのツアーコンダクターを私達のペースに引き込ますわけに行かず、
私の責任でコンダクターに先に行ってもらった。

そこから父と私の二人だけのツアーとなった。

やがてだんだん暗くなってきて、決断の時が来た。
とても予約してある8合目までの山小屋には、父は着けそうにない。

6合目半ばで二人は考えた。
私だけが先に行って、まず7合目の山小屋を確保しよう。

夏休み中の登山混雑はひどいものであった。当然、山小屋は、満杯である。
飛び込みの客への部屋などは、とても得られそうもなかった。

アマチュア無線のトランシーバーを父に渡して、
電池節約の為に毎時ちょうどの時刻に連絡しあうことを約束して
私は、ひとりで7合目に向かった。

案の定、7合目に着いても部屋はなかった。

後から来るであろう父の状況を説明して、
交渉に交渉を重ねて、布団部屋を確保してもらった。

そして、無線機で父に連絡すると、父は、無線機越しに私に言った。

「お前だけは、そのまま山頂まで行け、と。

 こんなツライ登山だから、行ける時に行っておくべきだ。

 オレに付き合って、登頂を諦めることはない。」

私にとって、父はやっぱり父であった。

高価なカップヌードルをひとつ買って、私の父に渡すように頼んで、
私は、また登り始めた。

真っ暗な中を独りぼっちで登った。
話し相手もなく、先の行程もわからず、ただただ登った。

辛かった。何度もわき道で横になった。
けれど、その道中は、回りも悲惨だ。

途中で力尽きて、大の字になって、眠ってしまっている人。

力尽きて、寒さに凍えている子供を一生懸命暖めている親。

真っ暗な中でお互いをロープで縛りながら、一列になって、
2秒に1歩づつぐらいで小さな掛け声を掛け合って歩き続けている数人の老人団体。

この老人達のペースで、いったいどこまで歩き続けてどうするのだろう?
私には、決して大げさではなく地獄絵のようにも見えた。

夜10時頃、何とか8合目の山小屋に到達した私は、カレーライスにありついた。

ご来光までに時間があるから、休めと言われても、
満杯の山小屋の寝方は、とても寝られるものではない。

結局、ちょっとだけ休んで、眠ることなく、また登り始めた。



8合目以降は、もう数珠繋ぎの行列である。
渋滞状態で、自分のペースで歩けない。前が進まないので、自分も進めない。

だんだん明るくなってきて、山頂に近付くに連れて、また怖ろしい光景に遭遇した。
道から外れて、崖さえも登り始める若者達。
山頂でのご来光に間に合おうと、人の肩を掴んでまでも追い抜いていく人々。

もはや、そこには、ルールも礼儀もなかった。
そんな光景を見ているのが辛かった。

山小屋を早目に出たせいで、私もとりあえず山頂でご来光を拝めた。
ご来光の瞬間は、拍手が起こる。拝む人がいる。抱き合っている人がいる。
私もご来光を観ながら、もう2度と観ることはないであろう、そんな気がした。

けれど、こうも思った。
私は、父に引かれて、富士山に登った。ならば、、、
自分の子供達をいつか連れてもう一度登ってみよう。

私は、一度も登らぬバカではなくなったけれど、二度登るバカでもいいっか。

そう思ったりもするのだ。

でもまぁ、正直言って、体力から察するに、実現は、夢かもしれない。

ちなみに父は、8合目でご来光を拝んだそうである。

「夢は、達成した。」とのことであった。




P.S

一応、私の個人的な意見である。

富士登山は、特にご来光に価値を見出す必要がない方は、昼間に登ればいいのである。
気があった仲間と黙々と登るのもまた楽しい。
いつも見えている下界の眺めは、確かにすばらしいし。

# 私の会社には、毎年登っている人も居る。

ちなみに登山素人の方は、おおよその時間は、5合目から山頂までは、6時間ぐらい。
軽装で、ベストコンディッションで。無理をせず、マイペースで。

時間がかかるからといって、オヤツをいっぱい持って登るのは、ナンセンス。
酸素ボンベは、確かに効果あったような気がするけれど、
所詮、途中でなくなっちゃうので、なくなってからがツラいよーな気も。

寒さ対策も忘れずに。

ちなみに私は、いつも履いているのと違った慣れない靴を履いて行ったので、
足の両親指の爪が見事に剥がれた。

怖くて観れなかったけれど、自宅に着いて靴を脱いだら、靴の中は、血の海であった。

完治、半年。

まぁ、私も登山素人の分類でしょう。

さぁ、一度も登ったことのない貴方、挑戦してみてはいかがですか?

# 富士山、一度も登らぬバカ、二度登るバカ。

写真は、ちょっと前に新幹線から。

やはり、富士山は、遠くから見るべき山なのを実感。