2023年7月28日金曜日

52ヘルツのクジラたち

町田そのこ著である。

52ヘルツのクジラというのは、他のクジラたちよりも周波数が高いために、 コミュケーションが取れないクジラのことを言っている。

伝えたいのに、伝えているのに伝わらない。
伝えてくれるのにわからない、気がつかない。
そんな人間関係の物語である。

そもそも人間は十人十色はず。
けれど、生まれや育った環境の違いから
ちょっと何か外れてしまった為にコミュニケーションがとりづらくなる。

その孤独さ、叫んでも届かない思い。
叫べない思い、叫ぶことを忘れてしまった思い。

けれど、そんな声なき声の存在を知った時こそ、その叫びを受け止められるようになったはず。

目に見えるものがすべてではなく、
聞こえるものがすべてではなく、

目に見えなくとも、聞こえなくとも、
その向こうにある思いとコミュニケーションをとることが出来るようになることが
この物語のモチーフにひとつと私は、感じている。


P.S

最初、目次を見た時には、短編集かと思った。
一章ずつ手が空いた時に小刻みに読んでいけるな、と思った。

けれど、一章目を読み終えた時にそうでないことがわかった。
そして、息継ぎもなく一気に読み終えた。

善い小説に出会えた気がした。