2021年10月12日火曜日

生死の紙一重の間に

 
キーボードを打ってると左腕に蚊がとまった。

普通ならこちらも本能的に手が動くのだけれど、
明らかに殺せると感じると、こちらも一瞬思考が散歩する。

“最期だから思いっきり吸わせてやるか”
 
“うんにゃ、吸い終わった途端、一瞬で死んで意識もなくなってしまうのなら

 吸おうが吸うまいが同じじゃね?”

しかし、その思考の散歩は、複雑な薮に迷い込む。

自分がその立場だったらどうなの?

一瞬後に死んでしまうとわかっていたら
その寸前の幸福感に意味はあるのか?

考え込んでしまうものの、結論は出そうにない。

でも、普通は、死ぬタイミングなんてわからないものだもの。
今ある幸せの瞬間は、やはり味わっておくべきなんだろうな。

とりあえずの結論はそこに降り立った。


P.S

けど、次の瞬間、私は腕をパチンと叩いた。

吸ってる瞬間に突然訪れた死は、
幸福感の中の死になっただろうか

渡辺淳一の失楽園を思い出した。