2023年8月17日木曜日

最後の医者は桜を見上げて君を思う

二宮敦人著

いやなんと声を出して泣いてしまった。
ティッシュは、何枚使っただろう。

構成は、

第一章 とある会社員の死
第二章 とある大学生の死
第三章 とある医者の死

から成る。

それぞれの物語は大方別れていそうなものだけれど、やはり順に読むべきでしょう。

主役は、二人の医師である。

ひとりは、何が何でも助けようと最後まであきらめずに病気と戦おうとする医師。
もうひとりは、延命的な無理な治療は辞めて、残りの人生をどう生きるかに重きを置く医師

その彼らの思いと行動、そして、葛藤の物語である。

会社員は、白血病である。骨髄移植に期待を寄せながら。
大学生は、筋萎縮性側索硬化症である。まだ若いのにもかかわらず、なす術がない。
最後の医師は、癌である。他にも転移が見つかり、もはや手術も出来ない状態になった時に、彼はひとつの決断をする。

それぞれが症状の発見から、闘病、そして、死に至るまでを描くことになる。

その表現は小説的ではあるけれど、それを読みながらに充分にその状態を想像しながらも、きっと誰もが、現実はもっともっと辛いモノであろうことに思いを馳せるに違いない。

そして、それを越えて、二人はどう変わってゆくのか、二人の関係がどう変化してゆくのか。

その現実的なシーンとその進行に、読み始めたら止められない一冊である。


P.S

人間にとって、死は避けられない。

そして、多くは、何らかの病気で死ぬことになる。

人の死は、十人十色であっても、

いつか来るその日の為の覚悟も必要であろう。

そんなことも思う。