2004年7月31日土曜日

三つの涙


 海外旅行に出発する今日、三つの涙と 出会いました。


  ひとつは 新幹線のホームで。

   大学ノートを胸に抱え、やがて そのノートで顔を隠したかと思うと

    次の瞬間 どうしても 別れ際の彼を見ようとして そのノートをとったとき

     もう 彼女の顔は 涙でぐしゃぐしゃでした。


  もうひとつは、成田空港の出発カウンター近くで。

   Gパンに黄色の半袖Tシャツを着た中年の男性から

    写真をとってくれませんかと カメラを渡されて。

     ファインダーをのぞくと それまで神妙だったもうひとりの若い女性も

      ニコッとしました。 が、

       カメラを返すときには、彼女の笑顔はもうとっくに消えていて

        しばらくすると、彼に抱かれた胸の中で

         彼女はワアワア泣いていました。


  もうひとつは、出国審査通過後の廊下から見えました。

   相手が誰なのかは、わかりません。

    搭乗口に向かう動く歩道に向かって

     最初 小さく手を振っていたかと思うと

      やがてハンカチで目頭を押さえながら

       手をのばして 大きく 大きく。

        最後には 一生懸命ハンカチを振って。

      でも何となく 彼は気づいてくれていないようでした。

       もうとっくに通りすぎてしまったであろう時間が過ぎても

        彼女はそこから立ち去ろうとはしませんでした。

         そして たまにチラッと彼が見えたのでしょうか、

          突然大きく手を振ったかと思うと、

           すぐにその手が止まってしまって。


  確かに 別れはいつも悲しく感じます。

   ただただもう口からは何も言えなくて

    涙を流すばかり。

     どうして神様は、人間をこんなからだのしくみにしてしまったのかと

      恨んでしまいたくなることもあります。

   でも、

    でも、ほんとうに別れ際に何も言えなくなってしまうのなら

     もっともっと いつもいつも その時に言うべきことを

      いっぱい言っておくべきなのでしょう。

       「がんばってね」 とか 「体に気をつけてね」 とか

      あっそうそう たぶん 一番最後に言いたくても

       涙で言えなくなってしまういつもの言葉も

          「愛しています。」