2007年6月12日火曜日

シャトウ ルージュ

渡辺淳一作である。

ポルノ小説。
と思ったら、とんでもなかった。

# 私にとっては。

話は、ここではあまり書かない。
ネットでサーチしてください。

優秀な将来も有望な青年医師が、セックス嫌いな美しい妻をフランスの古城に監禁させ、その手のプロフェショナルに預けて調教を依頼するのである。
そして、それを覗き見て葛藤する主人公。

正直言って、渡辺淳一もここまで描くか?などと、最初のうちは思った。
やがて、読み進むにあたって、品のいい官能小説かと思った。

が、そうではなかった。やはり渡辺淳一の小説であった。

私は、この主人公に入り込めた。
彼の思うこと、行動が、自分にも置き換えられた。
とても哀しい気持ちになったが、それを全くの別世界の話と切り捨てられるほど、荒唐無稽ではなかった。

この小説のテーマで言えば、
私は、古い思想と新しい波との間でいつも葛藤している。

そして、渡辺淳一は、その私の葛藤にいつも問題を提議し続ける。

残念ながら、この小説はお奨めしない。
特に若い方々には、読んで欲しくないとも思う。
見る側に充分な許容がないと、この小説は誤解されそうだ。

かと言って、私のようにすっぽり主人公になりきれてしまったことも、
ある意味、私に関するあらゆる問題を包括しているような気がするのも問題であるが。

これをふしだらな、単なるSM小説にしか見えなかった読者は、
または、この小説が一つの読み物として普通に読み終えた読者は、

きっと今が幸せなのだと思う。



P.S

あえて、この長編小説の最後の行を記す。

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そして最後に、プライド高くて一人よがりで、そのくせ、いつもどこかで自信がなくて、怯えていた自分に向かってつぶやく。

「さよなら......」

まだ、しかと自信はないが、もしかすると明日から、僕は新しく出直せるかもしれない。

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だから、私は、この最後の行に、とても救われたのだった。