2021年6月16日水曜日

フェイクスピア(1)



 

 

 

 

 

 

 

 

# 思いっきりネタバレ含みます。

今回のフェイクスピア。

NODAMAPのウェブサイトの野田氏の初日開幕メッセージに
 
「なるべく無で観てください。」
 
というコメントが目に入り、
無勉強で、いやいやいや、いつも勉強したところで
スムーズに理解できる訳ではないのだけれど。
今回は、なにも予習せずに観劇に臨んだ。
 
# どーせ1回で分かるものじゃないんだし、いつも。
 
今回の冒頭も意味不明から始まった。
 
大勢の人が立っている、そして倒れる。木のように?
何か箱が現れ、そこには声が入っている。
イタコが現れ、若い父と年老いた息子。
「あたまを下げろっ!」「あたまを上げろっ!」
若い父が命令するかのように叫び、
年老いたイタコがそれに従う姿は、正直言って気分が悪かった。
 
そして、いつものように、言葉遊びが飛び交い、
私の中で内容の整合性は全く取れないまま物語は進んでゆく。
 
正直言って、そんなにシェイクスピアに詳しいわけではないので、
きっと、その表現の神髄に触れられていないと思う。
 
漠然とした中で、おぼろげに感じるのは、
リアルとフェイクのその近さ。
リアルがフェイクに聞こえる。
フェイクがリアルに聞こえる。
そのリアルとフェイクの紙一重の差に、翻弄される。
言ったが勝ち、書き込んだが勝ち、、、
セリフが、日常に沁みこんでいていて痛い。
 
そして、そのセリフの豪雨の中、私は気がついたのだ。
これは、36年前の日航機墜落の話だと。
 
冒頭に人々が暗がりの中で倒れたのは、木であり人であったのだ。
若い息子はその時のパイロットであり、
年老いた息子は、それから36年経った息子だったのだ。
 
私は止めどもなく思い出した。あの悲惨な事件を。
そして、カラダが震えだし、涙が止まらなかった。
 
言葉が封じ込められた箱は、ボイスレコーダーであり、
そこに入っていたのは、命の最後に生き延びようとしたリアルな叫びだった。
 
飛行機内を演じる役者たち。
「あたまを下げろっ!」「あたまを上げろっ!」
舞台で発せられるセリフに、私は思い出す。あの声を。
 
それは、決してフェイクではなく、命をかけたリアルな言葉だったはずだ。
神を前にした、本当の叫びだったはずだ。
 
その圧倒的なリアルに、フェイクなんぞ一片のかけらもない。
私は、舞台でのその出来事に、ただただ涙していた。
 
 
P.S
 
36年前のあの出来事に、私は非常にショックを受けた。
 
ボイスレコーダーの音声データが公表されると、
私は何度も聞いた。哀しかった。身につまされた。
 
自分のホームページに音源のリンク先を掲載していたけれど、
いつの間にかリンク先がなくなっていた。
 
けれど、今は、Youtubeでいくらでも聞けるようになっている。
今回の観劇の鑑賞者の何割がそのリアルな声を聞いたことがあるのかわからないけれど、一度、聞いてみるべきだと思う。
 
そこには、間違いなくリアルな言葉が残されている。
 
 
AM 02:12:49